高知で、まだ前例のなかったかたち
ichi は2019年11月、高知市愛宕町の元飲食店だった空き店舗を再生して開業しました。当時の高知には、無人・非接触型の一棟貸しホテルはまだ見当たりませんでした。開業から長いあいだ、スタッフを置かずに運営してきたのも、この宿の特徴です。
フロントに人を置かない運営が認められるかどうか、代わりにどんな措置が求められるかは、法令や自治体の条例・運用によって異なるとされています。施設の所在地を所管する保健所に、計画の段階で確かめておくことが欠かせません。ichi も、この点を保健所と一つずつ確かめながら仕組みをつくりました。
「会わない」ぶん、事前に手渡しておく
ichi のチェックインは、ご予約後の事前入力フォームとオンライン決済、そして館内のタブレットで完結します。ご到着前には、メールや LINE で道順や駐車場、鍵の受け取り方をお送りしています。
対面で説明できないぶん、迷いそうなところを先回りして、言葉と写真で手渡しておく。私たちが大切にしているのはここです。旅先で「どこに停めればいいのだろう」と立ち止まる数分をなくすことが、人のいない宿でできる、いちばん最初のおもてなしだと考えています。
人の気配を、先に置いておく。
温かさは、設えが語ってくれる
扉を開けると、土間のリビングが迎えます。ヘリンボーンの床、猫脚のバスタブ、高知の作家がつくった器。誰かに案内されなくても、手に取るもの、足の裏に触れるものが、この宿がどう過ごしてほしいと思っているかを伝えてくれます。まちに暮らすように泊まる、という ichi のコンセプトは、スタッフの言葉ではなく、空間そのものに託しています。
空き家を宿にするとき、ここから考えます
セルフチェックインは、人件費を抑えるための仕組みとして語られがちです。けれど ichi で学んだのは、会わないからこそ、案内の言葉や設えにいっそう心を配る必要がある、ということでした。私たちがご一緒する宿づくりでも、許可の見通しと同じ時期から、この「迎え方」を一緒に設計しています。開業してからも、お客様の声を見ながら案内文や仕組みを直していく。その積み重ねを、オーナーの方と長く続けていきたいと考えています。
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